目からコグ!Vol.5 新型コロナ:緊急事態宣言解除!有事に人の心を動かすスピーチとは?〜メルケル独首相と安倍首相の場合〜

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昨日、全国で解除された緊急事態宣言。今回は、事態の深刻さを感じ行動を変えた等の反応がみられたドイツ・メルメル首相のスピーチ(3/16発表)と同時期の安倍首相のスピーチを素材に、有事において多くの人の心を動かし意識変革を促すスピーチとは一体どんなものなのか、コグります。
※出典:DieBundeskanzlerin(メルケル首相公式サイト)よりGoogle自動翻訳、首相官邸「令和2年3月28日 安倍内閣総理大臣記者会見」


共通点は「具体的で丁寧な説明」。違いは話の“深さ”と“数”

3月末時点において、コロナ対策をめぐって「第二次世界大戦以来の試練」としたメルケル首相。スピーチでは、ワクチンが開発されるまで感染拡大の速度を遅くするとの意思を示したうえで、国境閉鎖という強硬措置についてもその必要性を強調。国民に強い連帯を呼びかけました。一方、安倍首相も最大限の警戒、不要不急の渡航の自粛などを呼びかけました。

さて、これらスピーチがどのような内容で話されていたのか、情報の構成要素を分類したのが下の図1です。メルケル首相のスピーチは「具体的な説明」が57%と全体の内容の半分以上を占め、かなり詳しい説明が展開されていたことがわかります。

対して、安倍首相の場合も具体的に丁寧な説明が多く、メルケル首相とよく似たタイプになっています。

異なるのは「話の起点となる意見や提案」。これに関してはメルケル首相より10%多く、さらに「背景理由・効能など主観的根拠」に関しては、メルケル首相よりも3%分少なくなっています。

つまり、メルケル首相、安倍首相のどちらにも共通して言えるのは「具体的に丁寧な説明をしている」ということです。それぞれの特徴としては、メルケル首相は話題を絞って深く説明し、安倍首相は話題を多めに話していることが読み取れます。

トークの情報構成要素を分類して比較!

トークの情報構成要素を分類して比較!

図1:トークの構成
(図1:トークの構成)

質問を投げかけて、相手に考えさせるメルケル首相のスピーチ

スピーチは、ひとりの話者が多数の聴衆に発言するため、一方的で双方向なコミュニケーションではなく、質問は存在しないと思われがちです。しかし、質問をうまく使うことによって、聞き手にインパクトを与えることができます。メルケル首相も、質問となるフレーズを入れてスピーチをしていることが分かりました。質問の種類としては、YesかNoで単純回答できるCLOSED質問ではなく、相手に思慮を促すOPEN質問が使われています。

メルケル首相の質問の種類
(図2:質問の種類別出現数)
(図2:質問の種類別出現数)

まとめ:有事において多くの人の心を動かすスピーチの特徴は?

以上から、今回のメルケル・安倍両首相のスピーチから有事において多くの人の心を動かすポイントをまとめてみます。

方法は?
・メルケル首相のように「話題を絞って深堀りして話す」
・安倍首相のように「多くの話題(提案)を示す」

ちなみに「具体的な説明」と検出された内容を一部ご紹介すると……。

メルケル首相
・「何よりもまず、病気になった人を最善の方法で世話することができるようにします。ドイツには優れた医療制度があり、おそらく世界で最も優れたクニのひとつです。それは私たちに自信を与えることができます」
・「保証させて下さい。私のような自由と移動の自由が厳しく勝ち取られた人にとって、そのような制限は絶対に必要な場合のにのみ正当化できます」
・「連邦政府が経済的影響を和らげるためにできる限りのことを行っていること、そして何よりも雇用を節約することをお約束します」
安倍首相
・このいわゆるオーバーシュートの可能性について、東京では25日、小池知事が重大局面にあるとし、夜間・休日の外出自粛などを都民の皆さんに要請しました。千葉、神奈川、埼玉、山梨の4県知事とともに、イベントの自粛、人混みへの不要不急の外出自粛などについて協力を呼びかけています。大阪や熊本でも、この週末の外出自粛が要請されています。私からも、こうした自治体の呼びかけに御協力いただくよう、深くお願いいたします。
・政府として、こうした窮状を徹底的に下支えし、地域の雇用、働く場所はしっかりと守り抜いてまいります。そして、こういうときだからこそ、人々の心を癒やす文化や芸術、スポーツの力が必要です。困難にあっても、文化の灯は絶対に絶やしてはなりません。

以上から、有事において聞き手に意識変革を促すスピーチをするためには、現在起こっている事態を聞き手がリアリティを持って理解することができるような、具体的な説明を行う必要があります。加えてなぜそれを行うのかという「思い」を裏付けとして伝えるとよいかもしれません。

昨今の状況下で、従来の働き方から変化せざるを得なくなった方々も多いかと思います。経営層の判断はもとより、現場レベルでも前例のない事態を前に日々判断が求められます。負担を伴う変革を促す際、部下やメンバーにいかに納得感をもって説得するか。厳しい状況ですが、今こそご自分の話し方を振り返り、ブラッシュアップするチャンスととらえてみてはいかがでしょうか。

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